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2016年11月25日 (金)

天使も嘘をつく(11/24)

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坂手洋二坂手洋二率いる燐光群の新作「天使も嘘をつく」を座・高円寺で観た。

「天使も嘘をつく」という映画の製作を主演女優の不慮の事故により中断している映画監督(竹下景子演ずる)がー彼女はテレビの社会派コメンテイターとして一般に広く知られているという設定ー仕事の一環として西南諸島の島を訪ね、そこで起きている住民の民意を無視した自衛隊基地誘致問題を住民の側の視線でドキュメンタリー映画に収めていく日々の中で、体制側の巧みな嘘や世の中の矛盾に翻弄されながらも希望を捨てずに前へ進むしかないと覚悟するというお話。

このところの燐光群の劇作フォーミュラにすっぽりはまった劇進行で、なんだかデジャヴュ(前にも同じようなものを見た)のようである。

西南諸島の基地問題をとくとくと説くドキュメンタリー説法の部分と「天使も嘘をつく」という題名の映画製作のフィクションの部分ーおそらくこの虚構部分がこの芝居の核とならなければならないのだろうがーが乖離していて、無理やりその二つを同じ土俵にのっけたという感が拭えない。

劇作のために取材した島々で聞いた話の多くが盛り込まれている、と当日パンフレットにあったが、それをレポートする目的であれば、そのレポートは別の場所でお願いするとして、、、芝居はそのレポートを超えたところ、その先のところまで行って欲しかった。ーー例えば、主人公は「冷戦期のアメリカB級表現に於ける核恐怖」(思いもよらぬB級映画の表現の中にまで核の恐怖、赤の恐怖を連想させる刷り込みが多くあり、またそのB級娯楽映画を見ている人たちにまでそのショック・ドクトリンは連鎖していくということ)に関心があり、つまりはそれに関連した映画を作ることを人生の目標にしているという設定なのだが、その彼女の中の大きな部分がただその題名である「天使も嘘をつく」という言葉を連呼するだけで十分な問題の分析がなされていない。今の世界の動向を指し示した比喩であろうとしたのだろうが、言葉だけでなくそこの部分を内容で示してもらいたかった。

(ちなみに余談だが、今のブレクジット、トランプの当選現象に見られる新しい世界の勝ち組の手段を Post-truth (真実の後)というのだそう。実際にネットやSNSで拡散している、彼らが訴えかけている事柄についての事実確認については二の次で、彼らが大声で拡散していること(嘘)がマスの真実になっていくということ)

巷の演劇サイトなどでの指摘も目にしたが、役者の異口同音の体言止め口調も、それこそが「嘘」だと思えてしまう。あんな会話、それに突然踊りだすかのような大げさな身振りも、ありえない。

社会問題をうまく盛り込んだ「屋根裏」「だるまさんがころんだ」「カウラの班長会議」などの傑作があるだけに、次回作を期待を込めて待つ。

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