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2012年10月31日 (水)

女司祭ー危機三部作・第三部(10/30)マチネ

Kretakor

F/T2012 特集記事

今年も観劇追い込みの季節、劇場通いづめの月、Festival/Tokyo開催月間がスタートしました。。また、池袋周辺を歩きまわる日々の始まりです。(リンクは今年のフェスティバルの一つの特徴であるアジアのコンテンポラリー演劇に注目したプログラミングに関する記事)

で、今年のフェスティバル作品、最初の観劇となったのがハンガリーからやってきたクレタクールの社会意識のとても高いこの作品。

劇の途中で観客席にいる観客との対話の時間を設けてある(そのシーンでは逐次通訳がつく)ような半ドキュメンタリーのような作品。対話ではないその他の、主役である十代の少年少女たちが演じている劇の部分でも、このドキュメンタリー的な見せ方は意識されていて、もしハンガリー語が通じるところでの上演だとしたら実際にその場で役者が発言しているのか、作られたものなのかは分りにくくなっている。。日本語上演の今回は字幕が出るので、それが台詞である(たとえ彼ら自身の言葉から起こされたものであったとしても)ことが分ってしまうのだが。

***F/T12  HPより ******

ハンガリーの演出家・アールパード・シリング率いるクレタクールが、3年の活動休止期間を経て発表した『危機三部作』(2011年)は、古典戯曲の上演を続けてきた彼ら自身の転換点であると同時に、映画、オペラ、演劇と異なる形式を使って現実の問題にアクセスする、実験的な企画でもあった。
その掉尾を飾った第三部『女司祭』は、都会育ちの女優が演劇教師となり、民族問題に揺れる田舎町に赴任したことから起きる波紋を描いた演劇作品だ。生徒役には、ルーマニア・トランシルバニア地方でのワークショップに参加した子供たちが扮し、劇中で自らの生活体験を語る。都市と地方の格差や価値観の断絶、日常生活に潜む差別意識や暴力......子供たちの暮らす村の映像をも交えた舞台は、虚構と現実をないまぜにしつつ、地域が抱える課題をあぶり出す。子供たちの一人が客席に向かって言う。「ここで今、何が起こっていると思う?」。そのまっすぐな問いこそが、クレタクールのスタイルだ。

**********

グラマラスな有名俳優もいなければ、セットも途中で登場するバイクと時折ルーマニアでの撮影映像を映すスクリーンぐらい。先生に厳しく指導されながら子ども達が輪になって走り続けているシーンから始まるこの芝居。。。これが、今年のトップ10に入ることが決まり!!!といったような、超刺激的PROVOCATIVEでわくわくするEXCITING作品だった。

子ども達が暮らしている場所からの描いた視線なので、具体的には子どもたちの間にあるいじめ、そして教職者からの体罰、小さな村の宗教団体(教会)が持つパワー、日常にあるジプシーへの差別、新参者への抵抗意識、、などが具体例として劇の中で上がってくるのだが、それらがとても具体的で個人的な例である一方で、観客はそこに地球を半周した側に住んでいる自分たちの日常、そこにある種々の問題をはっきりと見つけることができるのだ。

例えば、こどもたちというキーワードから比較的すぐに辿りつけるのが、今福島で成長し続けている子どもたちのこと。大人の庇護の元でなければ日々暮らしていけないーつまり自分の意志ではそこから出て行くことは出来ないー弱者であるこどもたちにわたしたちは十分に情報を開示しているだろうか?大人のこずるさで言いくるめてはいないだろうか??

さらには実際問題深刻な社会問題となっている学校でのいじめ問題。ここにも、この劇で示されているような大人の事情が多く絡んでいるのでは?

先生と子ども達の会話からなるこの芝居では、そのほとんどが日常の平素な言葉で語られていくのだが、シンプルであるからこそ、そして安易な答えを用意してはいないからこそ、、そこから受け取れるメッセージの量、考えさせられる課題は1時間半の上演時間に比べても計り知れないほどに大きい。

作・演出のハンガリー人演出家アールパード・シリング氏が今回の上演に際してインタビューに答えている分がF/Tのサイトにあがっていたので、その中から得に興味深い文章を以下に抜粋してみた。


 「私は、スペクタクル(演劇)が社会に与える影響、またその

逆に関して興味を持っています。」

「もし演劇

が、現代的で率直で、そして真に迫ったあり方を失った

とき、一体何が残るのでしょうか? ――それは「今」で

す。演劇における最前線は、「今、ここ」です。私たちは

あきらめてはいけない。演劇の新しい役割を探し求めな

ければならない――」

38歳の演出家は演劇が社会に与える影響、またその逆(社会が演劇に与える影響)に興味があると言う。

先日観た「るつぼ」の作家アーサー・ミラーも「世界を変えようとしない演劇になど、とてもつき合う気になれない。」という言葉を残している。

このような社会情勢とコミットした芝居がなかなか出てきにくい日本でーどちらかと言うと通常は個人主義ではない社会であるのに、芝居の世界においては個人的問題の探求から繋がっていって世界/社会を洞察しようとするアプローチが多く見られるーこのような違った取り組み方の芝居を観る機会が得られるのがF/Tの醍醐味。

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