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2012年10月31日 (水)

るつぼ(10/29)

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昼間に新宿の片隅でゲイバーのドタバタネタで笑い、夜には新宿の反対側でアーサー・ミラーの問題劇「るつぼThe Crucible」を観る、これが東京の演劇世情の特徴の一つ、diversity -多様性だろう。

昴による上演 舞台評

ちょうど一年前、池袋の小劇場で観た劇団昴の若手部門ザ・サード・ステージによる同作舞台がとても面白かったので、今回も名作をじっくりと味わおうと意気込んで劇場へ。

***劇場HPより***

宮田慶子が芸術監督就任以来、企画、上演し続けている「JAPAN MEETS・・・ ─現代劇の系譜をひもとく─」シリーズの第7作目として取り上げるのは、アーサー・ミラーによる『るつぼ』。1953年に初演された本作は、17世紀末に実際に起きたセイラムの魔女裁判に取材しながら、1950年代当時のアメリカの赤狩りやマッカーシズムを痛烈に批判し、社会現象ともなった問題作です。また2001年の9・11同時多発テロ以降のアメリカ国内の動きを批判して再演され、本国アメリカでは大きな話題となりました。
社会における弱者と強者、群集心理によるパニック状態、そして一人の男がたった一人の少女に翻弄されていく姿を描き、トニー賞も受賞しました。宮田慶子自らが演劇研修所の試演会でも取り上げた作品を、『わが町』でもタッグを組み大きな評価を得た水谷八也が新たに翻訳、さらに深淵まで踏み込んで、再び挑みます。

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じっくりと。。。と、とはよく言ったもので、15分の休憩を挟んでおよそ4時間の超大作舞台。新国立劇場のPIT(小劇場)での上演であったのだが、そこそこの大きさのある劇場でやるとそれほどかかってしまうものなのか。。。それとも、どこかに長引かせる原因があったのか、、

どうも、一人一人が新国立劇場という大看板を背負い国立の劇場での上演ということで肩に力が入りすぎた感が。初日ということも関係するのか、これでもか、これでもか。。といった余分な説明部分がちょっとした脂っこさとして残っていたように思う。戯曲をそのままのせるだけで、十二分にそのスゴさは伝わるので、必要以上の絶叫、ドタバタはちょっと控えても、それの方がゾッとする怖さーあまりにも、進歩のない人の世の実態の怖さーが出たかも。

とにかく、演劇史の中でも屈指の名作戯曲であることは疑いようのない事実であり、何度観てもその戯曲の良さはますます際立つばかりであって、後半、主人公ジョン・プロクター(池内博之)が絶対の勢威を固持する教会への不信の中、個人の存在理由の証を残そうと自問自答する場面、ヘイル牧師(浅野雅博)が大きな組織・国家規模での過ちに気づき困惑する場面などはまさに言葉一つ一つを聞き逃すまいと劇場内の緊張感もマックスへと達していたし、この素晴らしい戯曲を丁寧に演じてくれたことにより多くの人へと伝わったことは確かではあると思う。

が、一方で、そのわりには、この劇の出来事の発端であり中核である少女たち(一夜にして聖女に奉り上げられた少女たちのリーダー格アビゲイル(鈴木杏)を含む)の心理描写が少々雑であったように思える。アビゲイルの激しい気性ー鈴木杏の演技ーばかりがクローズアップされ、17歳の分別がまだつかない田舎町の少女(実際の米国マサチューセッツ州、セイラムでの魔女裁判事件ではこの少女は12歳だったという)の浅はかな思いつきから起きた悲劇という捉え方ではなく、希代の性悪女、それもある程度成熟している女性によるマインドコントロールによって多くの人が翻弄された(今、尼崎で起きている連続殺人事件のように)事件のような描かれ方になっているのにはちょっと疑問を感じる。

他の少女達と何ら変わりのない、一人の少女が、ちょっとした感受性の鋭さから思い込み暴走してしまった、、ちょっとしたきっかけから発展した悲劇、、というのが怖いんだと思うんだけど。その意味でも、この年齢の少女たちの`少女’特有の心理描写をもう少し繊細に描いて欲しかった気がする。

とは言え、とにもかくにも。。。

4時間を覚悟の上、この機会に国立劇場ならではのチケットプライスで名作にふれてみるのは絶対に悪くはない。`演劇’の持つ力をまた信じてみよう、という気にさせてくれるはずである。

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