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2012年10月26日 (金)

こんばんは、父さん(10/26)

Stage29110_1

世田谷パブリックシアターで永井愛率いる二兎社の新作舞台「こんばんは、父さん」を観る。
***演劇サイトより****
舞台は廃墟となった町工場。天窓から夕陽が射しこんでいる。金目のものは全て持ち去られた後らしく、残っているのは機械の台座や工具棚、配電盤、コードなど、ガラクタばかり。2階に通じる階段にも廃材が山積みになっている。
 そこへ1人の男が入ってきた。窓からしのびこんだらしい。男は何の目的でこのような廃墟に来たのか? そして彼を追ってきた若い男は何者か? 二人は口論を始めたようだ。いや、もう一人誰かいる。彼らは知り合いなのだろうか?
 攻撃する者とされる者、求める者と拒絶する者、希望を語る者とそれを打ち砕く者――それぞれの立場や役割が入れ替わりながら、世代の異なる三人の男のやりとりが続く。夜が深まっていくにつれ、三人の抜き差しならない状況が明らかになり……。

*******

ネタバレ注意

上記の筋にそって言うと、工場に入ってきた男が父さん役の平幹二朗、追って来た若い男が溝端淳平、でもってもう一人の誰かが息子である佐々木蔵之介。。で男三人のみの芝居。

バブルはじけた後の日本のどこかで、日本経済の勢いの衰えと平行して身を持ち崩した初老の父さんとその息子ー二人はわけあって長い間音信不通状態だったー、バブルは知らないプアーな世代代表の若い男。。。金が無いことで繋がった三人が一晩を共に過ごし、どん詰まりの心境からちょっとした活路を見いだすという話。

今はそれぞれ金銭的にすっからかん、もしくは余裕は全く無い状態でー劇では彼らを小泉政権下で行われた規制緩和による負の事例として今日の格差社会・ふくれあがる貧困層の一例として挙げているー、そんな今日の経済の長期的停滞状態にある日本で生きる男たちがどこで人生見誤ったのかをそれぞれに振り返りながら互いの姿をも鑑みて(ここで戦争経験世代・バブル享受世代・バブル後に育った常に厳しい状況にある若い世代、と肝のすわりかたなどがまちまちでその違いは面白い)これからの道を模索していくのだが、途中、そこへ景気が良かったころから巣くっていた家族間の感情のすれ違い問題、今は亡き母親への思いなどの個人的な事情、家族問題が絡んでくる。この家族がバラバラになっていった思い出話の部分がどうにもすんなり飲み込めない。
ー父と母のすれ違い、母の孤独、父の暴走などの過去の部分のある意味核となる原因部分の説明が強引すぎるため、10何年間も音信不通でなければならなかった父と息子の複雑な関係が今ひとつ見えてこないのだ。

例えば、父が事業拡大に夢中になりおきざりにされた母の孤独ー息子と父の確執はやはりこの母親に関する感情の違いが大きいように思えるのだが。。彼女の社交的な性格(息子の回顧から想像するに面倒見のよい、社交的な性格だったらしい)、それまで町工場の発展を支えてきた才覚からしたら、彼女なりに変化に対応して切り抜けることが出来たのではないか、例えば新しい趣味を見つけて熱中するとか、良い悪いは別としてお金持ちの生活を享受するとか、、とじこもって消えていくだけではない道が彼女だからこそ見つけられたのでは??との疑問が湧いてきて、彼女の人生崩壊の過程が短絡的すぎるように感じられる。むしろ、家庭崩壊の原因が別のものであった方が、例えば父の浮気による男女の愛憎の泥沼化とか会社内の反乱劇による人間関係のゆるせない裏切りとか(、、、まあそれもあったのかもしれないけれど)、その理由付が台詞による説明からではそこまで追いつめられたという説得力が欠けるため、なんだかこの家族の崩壊の過去が上滑りな印象で通り過ぎてしまう。

資本主義下の負け組たちの悲劇(社会観察眼)と家族間のヒューマンドラマ、さらには世代間ギャップといったところのつながりがいまひとつしっくりこない。どこか、例えば永井氏による傑作戯曲、ある意味今作の対である「こんにちは、母さん」のように、もっと素直に家族の関係から丁寧に描いていった方が、結果として社会性も自然とついてきたように思う。

あとは、とても残念なのだが、やはり平幹二朗氏にこの町工場のかつての成り上がり社長で今は没落年金生活者の役が合わない。どうせだったら、(他にももっと楽に似合いそうな役者さんがいないわけではないと思うので)もっと彼の良さが出るような役をあててあげたかったように感じる。

そんな中、今回の舞台での大きな収穫は佐々木蔵之介の上手さを今更ながらだが、実感で来たこと。

若者と老人というまったくかけ離れた世代の真ん中に入って、劇をスムースに紡いでいく役割をも担っているのだが、まあ、タイミングと言い、演技と言い、、、上手い!!自然で上手い!!!




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