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2012年6月29日 (金)

12人のそりゃ恐ろしい日本人(6/28)

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楢原拓率いるチャリT企画の「そりゃ恐ろしい日本人」を座・高円寺で観る。

昨年の「死の町」「原発とスーちゃんとビンラディンと私」と2本ともが大変よく出来た作品だったので観劇日を心待ちにして劇場へと駆けつけた。

今回は09年初演の舞台を若干の改訂を加えての再演ということだったのだが和歌山毒物混入カレー事件を題材に、きっちりとこの国の現状を冷静に描いている。(国の根幹である`デモクラシー’がこれほどまでにブレていて、一体この先建て直していけるのでしょうか?ね 経済回復よりも絆よりも、まずはココ、この大前提をきちんと再確認しなければ、ね。)

********演劇サイト より*********

「♪死刑♪死刑♪死刑♪って、歌って踊って何やってんですかっ!!」
 和歌山毒物カレー事件の冤罪説に材を得て、死刑か?無罪か?で右往左往する裁判員や市民たちの姿を奔放なイメージと破天荒な展開で描いた2009年初演作を、内容も演出も一新してリニューアル再演!
 裁判員制度、格差・貧困・経済破綻、果てはテロ戦争まで世界中の大問題を四畳半にブチ込んだチャリT流・茶番喜劇の決定版!
「銭湯ではなく、戦闘に行って来ます。」

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♪マークがついているように、また、開演前に作・演出の楢原氏が「コメディーなので肩の力を抜いて〜」とあいさつしていたように、脱力系の笑いが随所にちりばめられた社会派劇。彼らは自らの芝居を「ふざけた社会派」と称しているようだ。

とは言いながら、その軟らかい表向きに反して、その実、中味はかなりストレートなSarcasm(皮肉)がてんこ盛りに盛り込まれている。ー司法制度、とくに今回のタイトルにもあるように(有名な裁判もののハリウッド映画「12人の怒れる男」から)09年から施行され始めた日本の陪審員制度についての疑問、実のところ実態は知られていないタブーでありながら密かに実行されている死刑制度の是非、格差問題、国際テロ、世界的な陰謀と刷込み、差別、資本経済依存社会、そしてDVに孤独死、未成年淫行、さらには地域コミュニティーのゴミ問題までーありとあらゆる?ハテナがそこここにつまっている。

座・高円寺初登場ということで、中劇場での上演に若干のとまどい、勝手の違いを感じているようなところも見受けられたし、その面での改善の余地もあるとは思うー例えばオバマ大統領の件や前半のパラノイヤジョークのあたりはすっきりとさせて、劇全体の流れをさらに勢いづけることも出来るかもーが、何と言っても、その若さゆえのマイナス面を若いからこそのシャープさと怖れ知らずのストレートさで補って余りあるところが大いに期待できるところ。劇作が良ければ、これからどんどん進化していけるはずなので。

このような社会問題とストレートにリンクされた芝居が現状の日本ではほとんどない、というその存在のユニークさも、この劇団の価値を大いに上げている。
(イリギスなんかでは政治家を名指しで登場させて茶化した芝居なんかはとても人気があり、頻繁に上演され、いい年をした大人達がこぞって小劇場へ通っていたりするのだが)

もちろん、違ったアプローチの仕方で、一見まったく社会問題からは離れた題材から人間の根本の性質を暴き、そこから今起きている事象を検証するといった芝居もあってしかるべきだし、その方法で良い作品もたくさん生まれているのだが、どうもそちらのオブラートに包んだものの中味を推測しながらジワジワと中味を暴くといったものが大半を占め、今回のチャリTのような愚鈍なほどにストレートなものが少ないように思えるのだが。。。。もっとこのようなジャンルのものが作られても、バランス的には良いのかも。

そのストレートな社会派劇を上演する際、今回、チャリTがとっているような茶化しながら、笑いを大いに盛り込みながら、というのがとても重要なキーになるのだと思う。
その異化効果をどれだけ有効に活かせるか、それによって結果はだいぶ違ったものになるだろう。

近年ではこの方法で大成功した例としては燐光群の「だるまさんがころんだ」がある。


後半、つくられた社会機構に翻弄されている主人公がパラノイヤに陥りどんどんと幻想的な悪夢の世界が展開されていき、最後にはアフガンのテロ戦争にまで発展するのだが、これとて悪夢のものがたり、対岸の火事で見過ごされるエピソードでもなく、、至極まっとうな理論の末のこの国が対面するかもしれない未来想像図の一つとして受け止めるべきであろう。

*******おまけ****

今回の毒物カレー事件の裁判に関するエピソード、作者曰くリサーチを経て今わかっている事柄を忠実に反映させた、ということだったのだが、そうなると、今更ながらにその内容で「一人の人間を絞首刑台」へ送る判決が出ていることに対する驚きとそのような世の中に属している恐怖を感じずにはいられない。(ましてや法務関係者でもない一般人のリサーチでこれだけの裁判制度のトリック、矛盾が探せるのだから、なおさら怖い)
実際のところ、彼女が毒を入れたのか、入れていないのか、、決定づけることは出来ないとしても、この協議内容と証拠では「あくまでも彼女はグレーで、でも黒とは言いかねる」のは明らか。

先日のネパール人ゴビンダさんのえん罪確定と言い、いまも続いている東電の釈明問題、小沢議員の裁判問題、、、、と、一体何処に、そもそも正義は存在するのだろうか?

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