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2012年6月 5日 (火)

天使猫(6/1)

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座高円寺で渡辺えり率いるオフィス3○○の新作「天使猫」を観る。

今回、去年の震災時に上演された「月にぬれた手」ー震災のため、1週間遅れての開幕、上演ーがまず再演されて、今回の「天使猫」と連続上演企画だったのだが、「月にぬれた手」は昨年観劇することが出来たため、新作の「天使猫」のみの観劇。

「月にぬれた手」(作渡辺えり、で演出は鵜山仁)では高村光太郎を、そして今回の「天使猫」(作・演出渡辺えり)では宮沢賢治を題材に、それぞれの作家・芸術家の人生を回りの人間との交流を通して描き、それぞれの作品を紹介しつつ、現在のわれわれの課題であるこれからのこの国のあり方、われわれの進むべき方向、その選択に至るための考察の手引きを示している。
―高村光太郎と宮沢賢治の家族の間に長きに渡って近しい交流があったということがパンフレットに載っていたー

山高帽にトランクをさげた宮沢賢治(土屋良太)が賢治ワールドを、賢治が愛した東北の地を探訪する。劇中では代表作「銀河鉄道の夜」のくだりが紹介されたり、彼の書いた詩・文も紹介されるのだが、それを彼の人生、例えば農業指導家として岩手の農業開発、発展に尽力、奔走したり石を収集したり、エスペラント語を学んだり、天文学を学んだり。。。といった別の顔も紹介されるので、それらと一緒に朗読される詩はますます身近に感じられ、魅力を増す。

余談:エスペラント語って、目指した方向性としてはまったく間違っていなかったけど、、、根付かなかったね〜〜〜。現実的には英語がその役割を果たしちゃっているから。。。これって英語圏の人たちのパワーストラチャーと彼らのこれまでの言語優位性からのなまけ心もあるのかしら??ま、いずれにせよ、これも進化の一過程だよね。エスペラントが生まれなければ、反対にこれほどまでに英語が国際語として普及しなかったかもしれないし。。。人生、進化は「365歩のマーチ」ー三歩進んで二歩下がるってなことなのかも。

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この舞台、それぞれの点で高得点をたたき出しー戯曲・演出・キャスティング・演技ー総合的にも作品としてまとまりのある舞台で深い印象を残した。

物語の案内役として登場する猫を演じる手塚とおるのニャンとも人間ばなれした半ねこ的な姿にまずは心奪われ、岩手山として山をかぶって登場する宇梶剛士にすっかりものがたりの世界に連れていかれる。

何とも味のある渡辺えりと谷川昭一郎の夫婦(漫才!?)に魅せられ、さらにはフカフカの着ぐるみをかぶってうさぎとなって登場し、観客に問いかける渡辺えりに至っては、もうファンタジーでもSFでも、どこでまでもあなたについていきますという気にさせられ、すっかり舞台に引き込まれる。

小さなトランクから(奈落に)消えていく人々、反転させると違う顔をみせるステージセット、シーンによって何役も演じ分ける役者たち、、と言ってしまえばハイテクではなく、どちらかと言えばマニュアルなローテクによって仕掛けられる演劇的仕掛けが、これが最大の効果を発揮する。

俳優の変幻する力を引き出し、観客の持つイマジネーションを(効果的に)刺激するだけで、というかそれが上手く機能したときには、豊潤な芸術的威力を生み出すことが出来る、といった格好の例となった舞台。

今回の連続上演の一つの目的として、先人の行いから今われわれが直面している問題に対する答えを導き出すー宮沢賢治は2万人が亡くなった明治三陸地震の年(明治29年)に生まれ昭和三陸地震の年(昭和8年)に亡くなったそうであるーといった、3/11を経た私たちが立ち返るべき姿勢をも示しているわけだが、この震災に関する考察の姿勢がいかにもマチュアーな距離を保っていて、その結果、先に繋がっていく大局的な問題の捉え方がここでは可能となり、震災後に続々と発表される震災考察の舞台の中でも今作はとりわけ重要な位置を占めたといえるだろう。


パンフから渡辺えり文章の引用を最後に:「明治から現在まで日本はここまで変わった。光太郎と賢治を書くことは日本といく国を見つめることになった。そしてそれは自分たちを探ることだった。私が今こうして演劇を作るという仕事を選んでいる心理の奥底の謎をも探ることになった。」

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