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2012年2月21日 (火)

蒼白の少年少女たちによるハムレット(2/20)

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1月、2月前半の観劇レビューはこの後に続けるとして、まずは昨晩観た舞台から。

彩の国さいたま芸術劇場、芸術監督 蜷川幸雄氏が率いる若手俳優陣劇団、ネクスト・シアター(ちなみに高齢者劇団がゴールド・シアター)による蜷川版2012年度「ハムレット」を観る。

同劇団による第三回目の公演で、前回の「美しきものの伝説(10年)」も良い出来だったが、今回もいろいろな意味で埼玉まで足を運ぶ価値が十二分にある見応えたっぷりの舞台だった。


一般によく知られているストーリーだけに、昨今さまざまな形での翻訳上演がなされている今作だが、まずは原作に忠実な舞台で観てみたい、シェイクスピアの「ハムレット」を読み解いてみたいという方に特におススメしたい舞台。

ー途中と最後に演出家の意図的解釈が導入されている部分があるのだが、それはそれとしておいておいて、その他の部分、戯曲に忠実に上演されている大部分に関しては、この舞台をみて「ハムレット」とは?と観客それぞれががしっかりと頭で考えられるような、それほどに明瞭で淀みのない劇を展開している。ー

外国劇、それもシェイクスピアにしては予備知識がなくても十分についていける、シンプルなストーリーであるがために、逆に真の作品の深みに到達することなく、うわべなぞりだけで終わってしまうことも多々ある戯曲ではあるのだが、今回は河合祥一郎氏の丁寧な翻訳(これだけ手取り足取り解説してもらえたら、わからないとは言わせないというほどの全てを説明した訳)と若手役者陣のストレートな演技でやもすると荒唐無稽な印象を与えかねないシェイクスピアがすんなり、腑に落ちる形で受け止められるように仕上がっていた。

ちなみに蜷川氏は今回で7回目の「ハムレット」演出だそうで、私もそのうち3本(真田広之・松たか子による役者の楽屋が2段構造の舞台に設置されたメタシアター版をロンドンで、藤原竜也・鈴木杏による高いフェエンスの屋外バスケットコート場に閉じ込められた版をシアターコクーンで、そしてロンドンバービカン劇場での英国人俳優による有刺鉄線に囲まれた舞台版を)をーそして今回で4本を観ているが、今回の舞台が総合点としては一番高かったように思える。

その成功の大きな要因の一つとして、主人公のハムレット(川口覚)の好演を挙げないわけにはいかないだろう。その他、オフィーリア(深谷美歩)、王妃ガートルード(土井陸月子)、王、ホレイシオ、ポローニアス などなど回りを囲む役者たちも良かったのだが、それにしてもこのハムレットがまさに適役だった。
母親との愛憎に焦点を当てた真田バージョン、オフィーリアとの恋愛に焦点を当てた藤原バージョン、王子としての苦悩に焦点を当てたロンドンバージョン(ちなみに近年ロンドンで上演されたマイケル・グランデイジ演出、ジュード・ロウ主演の舞台もこれに属する)、、、と同じハムレットでも解釈はいく通りもあり、それこそ演出によっていかようにでも変化するとは思うのだが、今回の「ハムレット」では大人になりきれないマザコンの要素もあり、恋に臆病なナイーブな十代の少年の顔もみせる、多くに未熟な青年ハムレットが父の死を機に人の死生観に思いを巡らせ、大人の世界を垣間見て、また直にそれに関わらざるを得なくなる中で、成長をしていくその過程を芝居の中できっちりと見届けることが出来た。
その意味でも、非常に多層的な広がりを持つハムレットを観ることが出来た。


そんな役者たちの好演が、まずもって第一の収穫ではあるのだが、それに加えて、蜷川マジックが強力なバックアップをするのだからその強度がますます上がるというもの。

三方を客席に囲まれた舞台の中央には地下が透けて見える2層構造の透き通ったアクリル板で囲まれたジャングルジムのような舞台装置。若い役者達はその地下と地上のスペースを縦横無尽に駆け回るり、時にヴェローナの貴族の屋敷の中庭でロミオがジュリエットのいるバルコニーに手を伸ばしたように、透けた地下のスペースでオフィーリアが階上にいる“高貴なお方”ロミオへ手を伸ばすのだ。
深紅で統一された衣装も印象的ー喪に服しているロミオはモノトーンの衣装ーで、透けた空間の中央に突然表れる墓穴も効果大。


今回の宣伝ポイントでもある、せっかっくの「こまどり姉妹」の登場に関しては疑問の残るところではあるがーというのも、その登場により良い意味で続いていた緊張が一瞬途切れてしまうので、それほどまでに必要であるとは思えないー、さらにはフォーティンブラスの扱い方にも???は覚えるものの、、、それらのマイナス面を補ってあまりあるほどに、見応えのある若手の舞台であったことは確か。

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