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2007年12月18日 (火)

12月前半/失踪者(カフカ)から 大駱駝艦まで

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11月30日 (失踪者/世田谷パブリックシアター)
12月5日 (審判/世田谷パブリックシアター)  カフカ連続上演
★★★★

巷では評価が分かれているようだが、私の趣味にはバッチリあっていて、大好きなカフカシリーズの3(失踪者は以前アメリカという題で上演されたものの再演)、4本目。(他に変身、城があり)
シアタートラムの劇場空間をイマジネーションたっぷりに隅から隅まで使用し、カフカワールドを見事に作り上げている。
約80年前にプラハの下宿先でカフカが予言した近未来図にすっかり酷似した今現在の日本、そして世界情勢の深い混迷を思うとこの劇の上演意義が倍増してありがたく感じられる。
不条理という言葉では片付けられない、カフカのシニカルな洞察力と分析力に満ちた小説世界を3次元で堪能出来る幸せを感じずにはいられない。
両作品とも(シリーズ全体が)同じトーンで演出されているのだが、井手茂太の振り付けも上手くはまり、ブレヒト的スクリーン使用、ほの暗い照明、複数人キャストによって主人公が演じられる方式、、などなど、、全てがぴったりと劇世界にはまり、3時間の上演固唾をのんで見続けた。
恐ろしく、そして素晴らしい。

12月4日 (Get Back!/ グリング)
★★★★
下北沢スズナリでの新作上演。
作品のイメージ、タイトルイメージなどをプロジェクターで映し出す手法がこのところ(とくに若手劇団において)大流行りの感あり。デジカメやコンピューターCGなどを日常的な表現手段として使用している年代だからなのか映像で表現することが皆さんかなり好きで得意なようで、映像を使用しない作品を探すのが難しい程の氾濫ぶり。皆さん、達者なので文句は無いのだが、やはりその場で流れが遮断されることを留意しておいてほしい。
で、2時間弱の舞台だが、かなり面白かった。
ウェルメイドのお話の中にきちんと今が盛込まれていて、さらには今だけでは無い人の普遍の部分も描いており、十二分に楽しめた。
忙しさを言い訳に自己の欲求ばかり通そうとするする女主人公達、彼女達は肝心なことは口ごもり嫌現実は見ようとしない。そこに居合わせた若者達の描写がまたすばらしく、急展開するラスト(幕開けでもあり)も秀逸。
片桐はいりを筆頭に俳優陣が好演。

12月5日(朱雀家の滅亡/あうるすぽっと)
★(★半分)ー1.5

三島文学で高みを目指したのかもしれないが、目指す前に見せ物として最低限の質を固めてからにしてほしい。変な台詞回し、息つぎ、台詞を噛む などなど、、せっかくの戯曲もきちんと伝わらなければ意味無し。
だいたい、なぜ今国家への忠誠心が美徳なのか、21世紀の今、国家としての品格をそんなところ`だけ’に探す事自体があまりにもストレートでお粗末。21世紀の三島の読み取りを見せて欲しかった。

12月7日 (ハムレット/りゅーとぴあシェイクスピア能シリーズ)
★★
大好きなシリーズだけに、今回のハムレットに関しては首をかしげるしかない。
こんなにも大幅にカットされ、ハムレットに違う意味を持たせられてしまうとー主人公ハムレットは舞台中央に座ったままで、最後まで動くことも、、立つことさえもしない。全ては狂人ハムレットの頭の中の出来事ということなのであろうか?ーハムレットという戯曲を上演する意味なし。
世界中何千、何万もの演劇人が取組んできたであろうハムレット、それぞれに解釈が違ったものであってもその事に関しては問題は無いが、、ここまで中味を解体し血肉をそぎ落としてしまったものを果たして、「ハムレット」と呼んでもよいのかどうか?
皮肉なことに、通例の上演ではしばし不必要かも???と思われる事もある長ゼリフと伏線が実は、全て100%この劇には必要不可欠だったのだということを白日の下、知らしめてくれるという結果に。
フォーティンブラスの存在も道化のヨリックの逸話もないこのハムレットのなんと空虚な事。
プラス、、この芝居ハムレットの話を全く知らずに観た観客には、シェイクスピアのハムレットに対しての大いなる誤解を与えかねない(その前に筋を知らない人には舞台で起こっていることが全く理解できないと思うが)余罪まで残すという悲惨な結果に。

12月8日 (テイクフライト)

有楽町フォーラムで行なわれたミュージカル公演。
こちらも上演意義が、まず理解不可能。
アメリカでの上演を念頭においてのことなのかもしれないが、日本でライト兄弟やアメリア・エアハート、リンドバーグと言ったところで、、、それだったらやっぱり堀ちえみのアテンションプリーズをテレビで見ちゃうでしょう。
問題は描きたかった「飛行にかける夢。女性の社会進出の一歩。アメリカンドリーム。信ずる事こそ成功の基礎なり、、、」などなどの主題がまったく描けてなかったところ。それゆえ、観劇途中に「なんでこんな話、今観ているのかな〜。」なんてことが頭を過っちゃう訳です。
加えて、出演者たちのミュージカル俳優としての魅力もぜんぜん無し。
ジョージ・パットナム役の宮川浩に★ひとつ。

12月9日 (キル/Noda Map)
★★★★
ご本人(野田氏)がパンフレットの冒頭で触れていたように、嘘ぶく想像力満載のお芝居で、比喩が比喩をよび、またそれがどこかに繋がって、、と書かれた時期が納得!の遊眠社色から野田マップへの過渡期作品。
見る人によって、いかようにも広がっていく変幻自在なコンテンツに、会場では野田ワールドの摩訶不思議に酔いしれている観劇後の放心状態観劇者が続出。

主役のお二人、熱演は結構ですが、俳優側がカタルシス状態に陥らないようにお気をつけあそばせ。
あなた方はプロの役者なのですから。プロとして演じ手になって下さいね。
個人的には野田氏のバンリちゃんが不憫で、、不憫で、、最高にCooooooolで可笑しい。
舞台役者陣ー勝村、高田、野田、、などなどの脇固めが贅沢で素晴らしい。

12月9日 (女の果て/ポツドール番外編)
★★★★
かなり計算し尽くされた劇作と演出、演技に★4つ。
作品としては昼間のキルとまったく違う趣きのものになっているが(ポツドール番外編とは言え、本作シリーズとかなり似通った仕上がり)、そのかなり嘘ぶきながら目の前の観客と想像を繋げていくという点においては、それほどに違いは感じられない。
一見、スキャンダラスなはったり芝居のようでありながら、かなり冷静に計算しつくされている所がポツドールが評価されている理由であろう。
若者言語(実際の言葉という意味と共有方法の感性という意味での言語)で書かれた正当派の人間ドラマ。

12月10日(Beauty Queen of Leenane/パルコ劇場)
★★★(★半分) 3.5
マーティン・マクドナーの戯曲の素晴らしさに完全脱帽。
至る所で語られ尽くされていることだが、その若さにしてこの完成度、やはり既に21世紀の天才劇作家である事は疑いの余地なし。
大劇場故のズーッムアップ演出なのか、やはりちょっと大味になってしまっているところが残念。
女優二人が力を入れすぎると(名演技の領域に足をふみいれ始めると)、本来戯曲が持つ、怪物さかげんが薄れてしまう結果に。何と言っても、主人公の親子は`普通のアイリッシュ親子’いえいえ、私たちの回りにも存在する普通の親子なのですから、あくまでも異常なモンスターたちでは無いのですから。
だからこそ、長塚と田中両氏の普通さが良いのです。

12月13日(続・オールド・バンチ/パラダイス一座)
★★★★(★半分)4.5

あらゆる意味で、劇場にいる時間を有意義と感じさせてくれた、素晴らしい作品。
おもいっきり役者にあて書いた戯曲と演出の中、その期待に十二分に応える俳優達の存在感が全てを圧倒する。
ただ単にアート作品として舞台を上演するのでは無く、演劇というものの存在意義;劇作品+役者の存在+社会における役割+異世代との舞台交流+ライブパフォーマンスとしての一回性ーを目の前で知ら示してくれる舞台。これほどナチュラルに拍手がやみ、止まらない劇場というものを久しぶりに体験した。

12月14日 (遍路/劇団 本谷有希子)
★★★
ぎりぎりのところから発せられる弱い心の絶叫、結果として過激な言葉、攻撃的な態度として表れたとしても、その奥底のところの発信者の悩みが共有できるので、それが心に響いてくる、、というのが本谷戯曲の魅力であり、人気の秘密であると思うのだが、今回の作品はその本音のところが嘘っぽく、その異常行動の理由付けが理解しがたい物語になっていた。
東京っていっても田舎者の集まりなので、田舎者でも都会者でもカッコワルい人はやっぱりカッコワルいのです。
ヒルズに群がる人たちがものすごくかっこワルーーーく見える時もあるものね。

12月15日 (カミノベンキ/大駱駝艦)
★★★★
人類創世に遡り、人の成り立ちを再現した大駱駝艦版 の創世記。
その作品は時にはミクロの世界を丁寧に描き、また時にはマクロの世界をイマジナティブに描く。
いつもながらの美的な舞台にただただ溜め息。
言葉無くして、壮大な物語が雄弁に語れるというものを実践している集団。

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